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『ビートルズの真実』 あっという間に読んでしまう550ページ

2015.06.09 23:24|音楽
 『ビートルズを聴こう』の著者コンビ(里中哲彦遠山修司)の本。

ビートルズの真実 (中公文庫)



 ビートルズ結成に至るまでの4人それぞれの生い立ちから始まって、ビートルズとしての成功と解散、さらにその後の4人のソロ活動までを辿っていきます。とにかくかなり細かい部分まで調べ上げられています。里中氏は遠山氏に対して「ビートルズ以上にビートルズに詳しい」みたいなことも言っていますが、たしかにキャヴァーン・クラブの階段が何段だったかなんてビートルズのメンバーは気にしたこともないと思いますが、この『ビートルズの真実』にはそんなことも書かれています。
 巻末には参考文献が色々と挙げられていて、そこからの引用も多いようです。僕はそのほかのビートルズ本を読み漁るほど熱狂的なファンとは言えませんのでよくわかりませんが、もしかするとこの本のなかで初めて明らかにされるものは少ないのかもしれません(僕自身は初めて知ることもかなり多かったですが)。参考文献に挙げられている『ポール・マッカートニー―メニー・イヤーズ・フロム・ナウ』を今少しずつ読んでいますが、ここから引用されている部分も多いようです。
 ただポールの本は800ページというボリュームなので、よほどのファンでなければという印象もあります(ただこの本にはジョンの曲だとされてきた「In My Life」に関して、それを否定するようなポールの言葉があるのだとか)。一方で『ビートルズの真実』は、著者のふたりが4人の評伝や雑誌のインタビューに至るまでかなり網羅的に参考にして、おもしろい部分をまとめ上げているのだろうと思います(なかにはかなり細かい部分もありますが)。加えて対談形式であってふたりの掛け合いで進んでいくところがこの本を読みやすくしています。

 『ビートルズを聴こう』を読んで、あまり市場に出回っていないという映画『Let It Be』をネットの動画サイトで観ていたのですが、4人の関係が寒々しい感じで寂しい限りでした(ポールとリンゴがピアノを連弾するあたりは楽しいけど)。それでも『ビートルズの真実』を読むと、解散後の70年代後半にはポールがニューヨークのジョンの住むダゴタ・ハウスに度々訪れて、突然やってくるポールにジョンがあきれたなんてエピソードもあって、何だか妙に嬉しくなったりもしました。ポールの『ラム』ジョンの『イマジン』での中傷合戦と言われているものも、著者たちによれば世間が勝手にそう見ているだけで、本人たちはからかいあっているだけなんだとか。
 それから『ビートルズを聴こう』ではジョージに対しては結構辛辣な部分がありました(シタールに走ったのがまずかったとか色々と)。それでも『ビートルズの真実』では、ジョージがボブ・ディランたちと組んだトラヴェリング・ウィルベリーズ「Handle With Care」が傑作として挙げられていたりもします。多分、僕がリアルタイムでビートルズのメンバーの曲を聞いたのはこの曲でした(ロイ・オービソントム・ペティを知ったのも)。そんな意味でも懐かしさも感じました。(追記:よく考えたらその前に「Got My Mind Set On You」がありました。これもジョージです。)
 シリーズ2冊を読んでの感想ですが、ビートルズはやはりミュージシャンですから、その人となりよりも音楽自体に魅力を感じますから、曲そのものに関して論じている『ビートルズを聴こう』のほうがおもしろかったし、何度も読み返したくなる要素があると思います。



ポール・マッカートニー―メニー・イヤーズ・フロム・ナウ


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『ビートルズを聴こう』 彼らの曲と一緒に何度も読み返したい

2015.05.30 12:28|音楽
 副題に「公式録音全213曲完全ガイド」とあるように、ビートルズの曲のすべてについて語る本です。

ビートルズを聴こう - 公式録音全213曲完全ガイド (中公文庫)



 『ビートルズを聴こう』と謳っていますし、表紙には「Ticket to The Beatles」と記されていますが、ビートルズ入門篇というわけではなく、それなりにビートルズを知っている人向けの本であると思います。僕はリアルタイムで聴いた世代ではありませんが、若いときに洋楽を聴くようになるきっかけがビートルズでした。最近はさすがにちょっとご無沙汰していたところもあるのですが、ちょうどこの本が出たころポール・マッカートニーが来日したこともあり、ライヴに向けて全アルバムをおさらいしていたこともあって、この本に目が留まりました。
 著者のことなど何も知らずに読み始めると、ジョンのボーカルに「失神寸前」などとあって、里中という人物を女性ファンかと勘違いしてしまいました。里中哲彦は翻訳などをしている1959年生まれのおじさんでした。対談相手の遠山修司は1970年生まれのロック研究家だとか。
 この本はふたりの対談形式になっていて、それぞれの曲に対して1ページ程度の解説が加えられます。この分量がちょうどいい感じで、1曲1曲に耳を澄ましながら聴くのにぴったりです。だから読み始める(聴き始める)とどうにもやめられなくなって、寝る前にベッドのなかで読み始めたら次の日は寝不足になります。

 ビートルズの解説本は多いようです。昔、何かで読んだ知識では、たとえば「I Feel Fine」の冒頭の音は電気系統のトラブルだとされていましたが、現在では意識的につくられたものだとわかっているとのこと(p.297)。それからアルバム『Help!』のジャケット写真は手旗信号でそのスペルを表現したとされていましたが、これも間違いだったらしい(p.94)。ビートルズに関する研究みたいな趣きもあります。
 そのほかにもビートルズが革新的だった部分、1曲1曲の聴きどころ、コーラスグループとしての魅力とか、様々の情報が詰め込まれています。知らなかったことや解説を読んで発見した部分も数多くあります。ポールの曲「What You're Doing」はあまり注目したことがなかった曲ですが、妙に気になる曲になりました。
 里中氏はジョン・レノンが大好きなようで、ジョンに対する評価は高く、「Twist and Shout」には「圧巻です。ジョンの比類なき声。天下無双にして空前絶後。声それ自体に、こぼれるような魅力がある。生意気で、荒々しくて、セクシー。かつ説得力もある。」(p.30)と手放しの褒めっぷりです。こうした部分も同感ですが、遠山氏はとても冷静に知識を披露しつつも、『ABBEEY ROAD』のB面の解説では「ポールのやる気と創造力がなかったら、ビートルズは『サージェント・ペパー』のあとで解散していたというのは間違いのないところ。そしてリーダー・シップを発揮するポールは、メンバーから辛辣な言葉を浴びせかけられた。ですが、ポールが傷つきながらも楽曲づくりに励んだという事実はやすやすと忘れられてしまった。」(p.249-250)と語っています。このあたりはポールのメドレーを聴きながらだと涙を禁じえません。
 実はこの本の前にはこのふたりの著者による『ビートルズの真実』という本も出ているようです。そちらもぜひ読んでみようと思います。

小沼純一 『映画に耳を 聴覚からはじめる新しい映画の話』 映画のなかのサウンドスケープ

2013.08.31 21:32|音楽
 著者の小沼純一氏は早稲田大学大学院の教授をされている方で、音楽文化研究や音楽・文芸批評などの分野で活躍しているそうです。この本では小沼氏が雑誌やパンフレットなどに書いた約100本の映画についての文章がまとめられています。しかもそれは「音・音楽」をめぐって書かれたものです。

映画に耳を: 聴覚からはじめる新しい映画の話



 映画批評などを読むとやはりストーリー展開を追うというのがごく一般的な入り方ですが、この本はちょっと視点が違います。「あとがき」にはこう書かれています。

 目にはいるのはストーリーもしくは俳優のことばかり。あとは映像についてちょっと。音・音楽などほとんど皆無。もし映画について文章を書くことがあったなら、音・音楽に少しはふれたい。(p.391)


 音楽は好きですが、守備範囲はごく狭く、また理論的なことは何もわからないから何とも評価のしようもないわけです。映画や小説なんかを評価するよりもさらに印象批評になりがちだろうし、好き嫌い以外に音楽の楽しみ方なんてないようにも思えます。そんな意味で、この本は音楽の専門家が映画の音・音楽について語っているので、新たな視点から映画を観ることができるヒントに溢れています。

 ここで映画の音楽ではなくて「音・音楽」と記されているのは、『映画に耳を』では映画音楽だけでなく、映画のなかに出てくる様々な音に関しても触れているからです。「サウンドスケープ」という言葉があるそうです(もともとはカナダの作曲家の言葉)。視覚中心の「風景/ランドスケープ」に対し、聴覚性を前面にだしたのが「音風景/サウンドスケープ」なのだとか。著者はそういう視点でもって、たとえばホウ・シャオシェンの『珈琲時光』について分析します。『珈琲時光』という普通に観ているだけではよくわからなかった映画も、こんな観方(あるいは聴き方)があるのかと驚かされます。

 ほかにもこんないい裏話もあります。米国アカデミー賞でも外国語映画賞を受賞した『善き人のためのソナタ』(2006)についてです。監督のドナースマルクは、『ラマン/愛人』『リプリー』などの印象的なスコアでも有名なガブリエル・ヤレドに作曲を依頼しました。そのときドナースマルクはこう言ったそうです。

 想像してください。あなたは過去に戻って、ヒトラーに会えるチャンスがある。でも二分半しかない。そのとき、言葉を発することなく、自分の作曲した楽曲を聴かせることができる。それによって、後に犯すことになることどもをあなたがとめることができる、そういう音楽を(p.68)


 音楽にはそういう力があると思うからこそ、こういう言葉が出てくるのでしょう。改めて『善き人のためのソナタ』を観直してみたいと思いました。

町山智浩 『本当はこんな歌』 「見つめていたい」はラブ・ソング?

2013.06.30 17:02|音楽
 著者は雑誌『映画秘宝』の創刊者であり、映画評論家としても活躍している町山智浩氏。この『本当はこんな歌』は、勘違いされたまま聴かれていることも多い洋楽の歌詞を解説したもの。ハードロック全盛だった中学時代に洋楽を聴くようになった僕も、英語は未だにダメで、歌詞の内容などほとんど知らずに聴いていることも多く、英語の勉強にもなる一冊です。

本当はこんな歌


 例えばパール・ジャム「ジェレミー」という曲。これは自殺した少年の曲だとされていますが、歌詞の内容だけではよくわからない。「Jeremy spoke in class today」と歌われる部分に込められている意味について、町山氏はこう解説しています。「spoke」というのは「クラスや会議で手を挙げて何かスピーチする、発表する、という意味」だそうです。ジェレミー少年がその日どんな「spoke」をしたかと言えば、黒板の前に立つとリバルバーを口に含んで頭を吹き飛ばしたのです。この歌はそんなニュースに触発されて出来た歌だったようです。なるほど。

 日本でも有名なポリス「見つめていたい(Every breath you take)」は、本当はラブ・ソングではないようです。くり返される「I’ll be watching you」から日本語の曲名が付けられていると思われますが、この「watch」という単語には監視するというニュアンスがあり、この曲は女の子にふられた男が別れた女を監視し続ける、そんな場面を歌っているわけです。「君の息、ひとつひとつ」さえ、監視しているからね。そんなストーカーの歌なのです。恐ろしいことにまったく知らずに聴いていました。まさしく「本当はこんな歌」だったのかと驚かされました。

 取り上げられる曲は、1970年代から2000年代まで幅広い40曲。実際には僕は知らない曲も結構ありましたが、今ではYou tubeなどで検索すればいつでも聴くことは出来ますから、洋楽案内としても役立つかもしれません。いかがわしい感じの表紙もいい。