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『女ごころ』 拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない

2014.10.16 20:30|小説
 サマセット・モーム作の中篇。サマセット・モームは昔は教科書にも使われていたらしく、この本もロングセラーだったようです。久しく絶版になっていたものの新訳(訳者は尾崎寔)。
 サマセット・モームは通俗的だという評判もあるようですが、ストーリーテリングが巧みだからこそ今でも読まれているわけで、この作品も読み始めればあっという間。とにかくおもしろいのです。あとがきも含めて200ページくらいの分量だし、気軽に読めると思います。

女ごころ (ちくま文庫)



 美貌の未亡人メアリーは、フィレンツェにある山荘に滞在中、父親の友人であったエドガーからプロポーズを受けます。メアリーは特段結婚を望んでいるわけではないのですが、前夫のひどい最期を看取ったあとで、エドガーの地位と彼が与えるはず安定には惹かれるものがないとも言えないのです。
 エドガーは高級官僚で、近々インド・ベンガルで総督に近い地位に就くことが予想される人物です。歳は離れていますが幼いころからのメアリーを知っている友人でもあり、エドガーからの愛も感じています。実は同じころ、メアリーはロウリーという別の男からもプロポーズをされます。ロウリーは怠け者の浪費家で女たらしという、世間の評判はよくない人物。それでいて実は頼りがいのあるところもあるということが判明して……。

 ※ 以下、ネタバレもあります。

 なぜか表紙には拳銃のイラストが載っていて、その拳銃が物語のなかで何らかの事件を引き起こすことは予告されているようなものです。「物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない」というチェーホフの言葉が、村上春樹『1Q84』でも引用されていましたが、この『女ごころ』でも拳銃は発射されることになるわけで、物語はふたりの男の間で揺れる女ごころだけでは終わりません。
 銃が発射されるということは(必ずというわけではないけれど)死体が生まれるわけで、それをどうするかといったサスペンス的な要素もあります。映画化されてもおもしろそうだと思っていたら、すでに実現しているようです。

 サマセット・モーム原作の映画化といえば、ルイス・マイルストン監督の『雨』(短編「雨」が原作)が有名です。『雨』は名作として知られていて、淀川長治さんの解説付きのDVDも発売されています。『雨』がとても素晴らしい作品だったので、『女ごころ』の映画版も小説読了後に観てみました。
 映画版は『真夜中の銃声』という題名で、メアリーにクリスティン・スコット・トーマス、ロウリーにショーン・ペンという配役です。ロウリー役にショーン・ペンは二枚目すぎると思いますが、フィレンツェを舞台にしたロマンチックな仕上がりの映画になっています。ただその分モームの辛辣さは薄まっているという気がします。原作はもっとシニカルでひどく現実的な男と女の駆け引きの部分が良かったのですが……。

真夜中の銃声 [レンタル落ち] [DVD]



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