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宇野常寛 『日本文化の論点』 AKBは日本の救世主?

2013.07.29 19:54|社会批評
 著者の宇野常寛氏はサブ・カルチャー評論家として活躍している人物ですが、この本は現代日本文化について論じたものです。
 宇野氏の『ゼロ年代の想像力』では、膨大な量の小説・映画・テレビドラマ・音楽などを読み解くことで、ゼロ年代を生きる若者の生き方を考察したものでした。それによれば『エヴァンゲリオン』に象徴されるような「引きこもり」の生き方ではもうやってはいけず、ゼロ年代は『DEATH NOTE』『バトル・ロワイヤル』などのような「決断主義」でなければ生き残ることができないのだとか。取り上げる題材の幅広さには圧倒されますし、若者論として示唆に富んだ本だったと思います。

日本文化の論点 (ちくま新書)


 『日本文化の論点』では、バブル崩壊以降ほとんど機能しなくなった戦後日本の社会システムを乗り越えるヒントについて考察していきます。著者はそれを<夜の世界>という言葉で示しています。これは政治や経済といった<昼の世界>に対し、社会的に陽の目を浴びることのない世界であり、つまりは日本のサブ・カルチャーやインターネット環境なのだと言います。そんな<夜の世界>にこそ閉塞状況にある日本を変革する可能性があると言うのです(具体的にはよくわかりませんでしたが)。

 音楽消費が頭打ちになって久しいですが、宇野氏はインターネットなどの情報化社会がそれを後押ししていると見ています。ネット上ではそうしたコンテンツ自体はいくらでも見付かるので、情報そのものの価値はほとんどありません。また、そうした情報化は音楽コンテンツを「受け取る」だけの快楽から、消費者の側がたとえば2次創作という形で「参加する」快楽を付与するのです。宇野氏はそんなコミュニケーション様式に可能性を見い出しています。マンガもそのコンテンツだけを輸出するのではなく、マンガの消費のされ方としてのコミュニケーション様式を同時にパッケージしろと言います。このあたりはなかなおもしろいのですが、「日本文化最大の論点」として第6章でやや唐突に取り上げられるのは、アイドルグループのAKB48です。ちょっと驚かされます。宇野氏はAKB48から日本社会を論じるのです(冗談というわけでもないようです)。

 宇野氏のサブ・カルチャー批評は、映画や小説などの物語内容を取り出してきて、それから社会のあり方を論じるものです。僕は映画をよく観ますが、宇野氏の映画に関する文章は、映画批評とは異なるものとして読んでいます。それはあくまで映画をネタにした社会批評だと思うからです。映画そのものを評価の対象とするならば、常識的には、お子様向けの『仮面ライダー』シリーズなどはそうした俎上に載るものではないからです。きわめてまっとうな映画評論家である森直人氏は『仮面ライダー』シリーズを高く評価する宇野氏に対し、あくまで控えめながら、映画というジャンルの評論家としては、それに賛意を表することはできない旨のことを対談で語っていました。
 宇野氏のAKBに対する愛情は感じるのですが、この本をAKBファンの人が読んだとしても楽しめる内容とは思えません。一方で日本文化論として手に取った僕のような人にとっても、同様に混乱するような気がします。サブ・カルチャーは社会のあり方を反映することも多いでしょうが、そうでない場合もあるし、それを無理に日本文化論に結びつける必要性もないと思うのですが……。
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