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リチャード・マシスン 『縮みゆく男』 蜘蛛との闘いあるいは実存主義的な問い

2013.12.09 22:27|小説
 今年の6月に亡くなったリチャード・マシスンの新訳。訳者は本間有氏。解説には町山智浩氏も「私も縮みゆく男だった」という文章を寄せています。

縮みゆく男 (扶桑社ミステリー)


 リチャード・マシスンの本はいくつかの短編と『ある日どこかで』『アイ・アム・レジェンド』しか読んでいないのですが、今回新訳になった『縮みゆく男』もまったく違ったアイディアで楽しめました。マシスン作品の多くは映画にもなっていますが、ロマンチックなタイム・トラベルもの『ある日どこかで』とか、ゾンビ映画の原型ともなっている『アイ・アム・レジェンド』や、スピルバーグのデビュー作となった『激突!』など本当に多彩で、様々な引き出しを持っているのだと今回も驚かされました。

 最初は男と蜘蛛との闘いが描かれます。蜘蛛は男の背丈ほどの大きさがあり、男に憎しみを抱くように襲ってきます。男は砂地を駆け抜け、缶の森に逃げ込み、何とか追っ手の目を掻い潜ります。実はこれは地下室のなかの出来事なのですが、主人公スコットはある原因により蜘蛛と同じ大きさほどに縮んでしまったというわけです。そこまで背が縮むと蜘蛛は巨大なモンスターになり、階段の段差はそそり立つ絶壁に成り代わるというわけです。最初から読者をひきつける展開です。
 小さくなった男には日常生活そのものがサバイバルとなり、食料も水も満足にないなかで様々な闘いが続きます。このあたりはSFとか冒険小説のような展開ですが、一方で回想の場面では、“縮みゆく男”となってしまったスコットが地下室に閉じ込められた現在までの経緯が追われていきます。スコットの計算によれば、彼は1日に7分の1インチずつ縮んでいき、それがゼロになるのはあと6日。ゼロになれば消えうせてしまうということになるわけで、残された日々をどう生きるのかという根本的なテーマ(解説では実存主義的な問いとして捉えられています)にも踏み込んでいきます。

 解説によれば“縮みゆく男”が象徴しているのは、戦争から帰ってきてサラリーマンになった男たちが、社会的存在価値を減じていく様子でもあるようです。たしかに平和な社会のマイホームでは、戦場よりも男たちの居場所はなくなるのかもしれません(日本の多くの家庭でもそうでしょう)。スコットが小さくなるにつれ、夫婦間の愛情は失われ、父親としての威厳もなくなっていきます。身体のサイズだけの問題なのですが、虫ほどのサイズの人を愛することは難しいでしょう。とにかく色々な読み方が出来る小説だと思います。単純な僕としては、残り少ない時間を蜘蛛との闘いに振り向けるスコットの姿に感動しました。
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