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宮崎哲弥/呉智英 『知的唯仏論』 唯釈迦のみが仏

2013.06.09 14:01|宗教
 この本は宮崎哲弥氏が呉智英氏を迎えて贈る仏教対談。マンガ評論家としても知られる呉氏ですが、本来は儒者なんだとか。その儒者である呉氏が畑違いの『つぎはぎ仏教入門』なる本を出したため、仏教者である宮崎氏との仏教対談が実現したようです。
 呉氏はこんなふうに語っています。

 仏教とは何か。仏陀釈迦の教えである。すなわち仏陀釈迦が説いた思想である。英語でもBuddhism(仏陀思想)である。それ以外に仏教などあろうはずがない。一歩譲るとしても、仏教と名乗る以上、仏陀釈迦の思想を中心に持っていなければなるまい。(略)本来、仏教は「唯仏論」である。(p.8)


 「唯釈迦のみが仏であり、仏のみが真理を体現している」というのが、「唯仏論」というこの本のタイトルにもある言葉なのです。このあたりは日本の仏教というよりは、原始仏教や中観派に詳しい宮崎氏とも近い部分なのでしょう。

知的唯仏論


 この『知的唯仏論』はマンガ評論家でもある呉氏が参加していることもあって、冒頭は「通俗的な入り口」として宗教マンガについて触れています。手塚治虫『ブッダ』はもちろんですが、さまざまな宗教マンガが挙げられます。そのなかでも呉氏が推薦するのは、たかもちげん『祝福王』井浦秀夫『少年の国』などです。まったく知らなかったマンガなのですが、ぜひ読んでみたいと思います。

 この本のなかで興味深かったのが輪廻についての部分です(ほかにも非我説と無我説や、実存主義と構造主義の仏教的見方なども非常に参考になります)。仏陀自身は輪廻転生については語らなかったとも言われますが、ごく一般的な理解では、仏教は輪廻転生からの解脱を説いたとされます。しかし、もともと輪廻転生の考えは、仏教誕生の地であるインドでは一般的でも、日本においてはそうではなかったようです。仏教の伝来と一緒に輪廻転生も伝わってきたわけです。
 宮崎氏は下田正弘氏の「他者としての仏教」を引用して輪廻について整理しています。「確かに仏教の教義は輪廻からの解脱を説く。だが存在を束縛する輪廻という世界観を有していなければ、そこからの解放も意味をなさない」(p.43)。これを宮崎氏が言い換えると「もともと輪廻という観念を持ってない人びとにも、なお輪廻はあり得るのか」となります。
 輪廻転生がもとからある世界では、解脱が積極的な意味を持つのかもしれません。しかし、「死んでしまったらそれまで」という世界観においては、輪廻のほうが救いのようにも思えます。オケラだろうが何だろうが生まれ変わったほうがいいという意味合いで。
 仏教についてではありませんが、浅羽通明氏の『時間ループ物語論』では、アニメ『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』に代表される「ループもの」を論じていて、輪廻転生も「ループもの」との関連で論じられます。浅羽氏の分類では「ループもの」は4つに分けられるのですが、単純化すれば時間ループを肯定的に捉えるか、否定的に捉えるかになります。つまりは輪廻転生も肯定的にも否定的にも捉えることができそうです。
 
 ちなみに宮崎氏の輪廻に関する見解は、次の著作に引き継がれるようです。あとがきには次のような疑問を提示しています。輪廻とは死後の生があるということでなく、行為が連鎖すること(業の連鎖)であり、その業が何故ライフタイムを超えて相続され得るのか。そしてそれが誰から誰へと受け渡されていくのか。
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