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『書記バートルビー/漂流船』 バートルビーの不条理な死

2015.11.30 00:19|小説
 『白鯨』のあとに書かれたハーマン・メルヴィルの代表的な中短編。

書記バートルビー/漂流船 (古典新訳文庫)



 「書記バートルビー――ウォール街の物語」
 不条理劇風の短編。法律事務所を経営する“私”が語ることになるバートルビーという男の話。仕事が増えてきてそれまでの人員ではこなせなくなった“私”は、バートルビーという寡黙な男を雇います。しかし、この男は並外れて奇妙な男でした。
 バートルビーは書写の仕事を順調にこなしていますが、ある日、ほかの仕事を頼もうと呼びつけると「わたしはしない方がいいと思います」と断ります。あっけに取られた雇い主は空耳かとも疑うほど驚きます。
 たしかに上司の命令をそんなふうに理由もなく断るのはあり得ない話です。普通ならクビになって終わりだろうと思いますが、ここでの雇い主は何か理由があるのかと探りを入れたりもしますが、バートルビーはそれに答えることもありません。とにかく「そうしないほうがいいと思います(I would prefer not to)」とすべてを拒否していくことになります。
 なぜバートルビーはそんなふうにすべてを拒否しなければならないのか。この短編を読み終わってもそのあたりは謎に包まれたままです。バートルビーは一切を拒否し、最後は刑務所のなかで食事すら拒否して死んでいきます。メルヴィルはバートルビーという人物に何を拒否させようとしていたのでしょうか。
 解説では「陸」のシステムという言葉が使われています。それはこの短編の舞台であるウォール街の資本主義みたいなものを指しているのでしょう。それでもやっぱり不条理な部分は残っている感じもします。この短編に関してはデリダドゥルーズなどの現代思想家が文章をしたためているとのことで、後世に与えた影響も大きいものだったようです。

「漂流船――ベニート・セレーノ」
 漂流している見知らぬ船を見つけたデラーノは、その漂流船を助けるために船に乗り込んでいきます。デラーノは漂流船の船長であるベニート・セレーノに出会います。その船は黒人奴隷を運搬する船で、途中で嵐に出会って漂流していたとベニートは語ります。
 この中編は昔は岩波文庫で『幽霊船』という題で翻訳が出ていたこともあるようです。メルヴィルは「書記バートルビー」とはまったく異なる筆致で、妖しい船を具体的に描写していきます。
 この題名にもなっているベニート・セレーノはちょっと風変わりな人物で、肉体的にも精神的にも不安定な状態にあります。デラーノが援助を申し出ると感謝の気持ちを示すのですが、それが本当に喜ばしいことであるのかを疑わせるようなよそよそしい態度を示したりもします。一体このベニートという船長は何者なんだろうかという謎を孕んだまま展開していきます。
 その前にバートルビーという男について読んでいたので、ベニート船長に関しても世間を拒否するような偏屈な人物かと思っていましたが、次第にその船のなかの様子が不審な動きを見せるようになり、ベニート船長の態度の理由が示されることになります。
 妖しい船に乗り込んでいくデラーノはベニート船長に対して疑心暗鬼になります。そうした緊張した場面から突如として動きのある展開へと移行していくあたりは、映画化してもおもしろい作品になりそうな気もします。
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